2030年までにEV原材料となる黒鉛の争奪戦が激化。人造化により98%のシェアを誇る中国依存を抜け出せるのか

    BYD ATTO3
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    EV製造に必要不可欠な黒鉛

    2030年までには黒鉛は世界的に不足する

    EVに搭載されているバッテリーパックの製造には黒鉛という素材が必要不可欠であるが、近年のEVシフトに伴い、電気自動車の製造台数が増加していることによって争奪戦が激化している状況になっている。

    欧州の『2035年EV化法案』は待ったがかかっている状況ではあるものの、メルセデスの会長であるオラ・ケレニウス氏は「30年に欧州自動車市場全体だけでなく、恐らくメルセデス(の新車)の100%がEVにならないのは明らかだ」と述べている一方で、「われわれは(100%EV化へ向けて)準備をするだろう。だが戦術的な柔軟性も持ち合わせることになる」とも発言しているため、EVの生産が増えていく事はあっても、大きく減少することはないというのは想像に難くない。

    メルセデス EQS

    そういった背景から、2030年までにはEVの年間生産台数は2022年の約3倍となる3500万台ほどになると予想されていて、それに伴い黒鉛が不足して、世界的に77万7000トンが不足する見通しとなっている。

    EV用の加工済み黒鉛の世界シェアの98%は中国

    中国は天然黒鉛の生産では61%以上のシェアを持ち、EV用のバッテリーを製造するために必要な加工材としてのシェアは98%ものシェアとなっている

    中国ではEV政策が推し進められており、その後押しもあって2022年には中国のEVメーカーであるBYDがアメリカのテスラの年間販売台数を上回るまでになっている。

    BYD ATTO3

    2023年現在でもその勢いは衰えず、このまま中国国内のEVメーカーの成長が続くのであれば、国としても国外よりも当然、国内需要を優先するはずなので、中国国外の自動車メーカーにとって黒鉛の調達は大きな課題になってきそうだ。

    脱中国依存に向けての黒鉛人造化

    そういった背景もあり、欧米では人工的に製造する黒鉛である人造黒鉛の技術へ投資を進めている。

    天然よりも性能に優れる人造黒鉛

    人造黒鉛は一般的には天然の物より純度が高く、バッテリーの性能予測性に優れている上、導電性にも優れているため、充電時間の短縮や電池寿命の延命化といった利点を持つ。

    加えて、人造黒鉛と天然黒鉛の価格差も2023年に入ってから大きく縮まってきているとの発表もある。

    人造化技術でも中国に後れを取っている

    しかし、この市場でも既に中国が圧倒的な優位性を誇っていて、人造黒鉛の生産量も世界の約80%を占めている状況。

    アメリカも国内で新たに立ち上げられた黒鉛生産拠点に対して、優遇措置を図るなどしているものの、中国のバッテリー材料メーカー大手は世界の他の企業と比べ物にならないペースで成長を続けているとか…。

    ただ、中国の人造黒鉛製造は化石燃料に依存していて、温室効果ガス排出量が多いという環境問題も抱えているため、アメリカ国内の人造黒鉛生産拠点では再生可能エネルギーを動力源として、温室効果ガス排出量を削減した製造を実施。

    それでも、中国との競争力差は大きく、人造黒鉛の生産市場は、当面(10~20年)は中国がトップに君臨することになるだろうと予測がされており、EVメーカーとしても世界を牽引していく形になるのではないだろうか。

    BYD SEAL
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